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特集コーナー

平成24年度 第2回 府学歯報テーブルトーキング2(いじめと虐待)

『こころ心』―学校歯科医はどこまでかかわれるか?―

日時 平成25年1月10日(日) PM6時から
場所府学歯分室
(JR環状線桃谷駅前)

出席者(大阪府学校歯科医会広報部会)
常務理事寺下邦彦:MC
理事岩本圭司
第1部長青木建雄
第2部長大宅 渉
第1副部長村田 肇
部員藤戸 寛

MC)このたびの座談会は、『心(こころ)』を、テーマに皆さんに語っていただこうと思います。
実は、理事会の席で、役員の先生方に「心」あるいは、「こころ」と聞いて何を連想しますか?とお聞きしました。まったく先入観をもたれないために一切説明なしに聞いています。
すると金森会長は「動物としての人間が存在するために神様が与えてくださった行動制御の最たるものである。私は性善説を信じることなく性悪説を信じる。その基盤をコントロールするのが「心の存在」だと思う。「隙有らば・・・」という概念を払拭するために「こころ」があり、道徳倫理の実践を常に心がけなければならない。」と答えていただきました。
すぐさまこのような答えが返ってくるというのも「さすが」と感じます。
三輪監事は「鬼手仏心」(きしゅぶっしん)との答えをいただきました。
歯科医らしいお答えだと感じます。外科的なことは、大変なことをしでかしているのだけれど、それは患者さんのためにしていることだというようなことでしょう?
さらに他の先生のことばも紹介しますが、上田理事は「○他人に対する思いやり○平常心○気・胆力」。

MC)さらに紹介させていただこうと思います。
髙橋専務理事からは、「心」、「こころ」をそれぞれ文字として成り立ちから分析していただき、コメントをいただきました。発想がユニークで、まじめな先生の性格がうかがえます。
長年、学校保健の現場で実践されてこられた石黒監事からは心に残ったエピソードを披露していただきましたので別に掲載させていただきます。
Y常務理事は、僕が理事会で突然聞いた問いに「きっと、何か裏がある。」と必死に考えたとか。裏はありません。M理事は、後刻にカラオケで歌ったあと「この詩が私の『心』です。」とこたえられました。・・・ごめんなさい、何を歌ったか聞いていませんでした。(笑)
では、私はというとお恥ずかしい話、『心』と問われたら、浮かぶのは夏目漱石の「こころ」くらいでしょうか。・・・そんなわけないやろ。自分で聞いておきながら・・・といわれそうですが。ちょっと漠然としすぎていましたね、この質問。
実は、いじめる子いじめられる子、虐待する人、される子。それぞれに何かしらの“心”があるのではと、考えたのです。それを逆の発想から聞いてみたのです。虐待やいじめを外から見て実際に分かるのか?心なんて分かるわけがないのでは?
また、それに対応する人々も、それぞれに考えが多種多様にあるということで、果たして正解とするものがあるのか?と、考えます。
 “心”は、きわめて幼少のころから形作られるとお聞きしました。
『情動』は人によって決まっていて『気質』とも言われるのですが、子ども時代の学校や家庭で学習してこの情動回路が形成されていくのだそうです。これは、ダニエル・ゴールドマンが「EQ-心の知能指数」という著書で述べています。さらに、社会適応能力は昔の日本人は概念的に持っていた。しかし、最近の少年犯罪を見るにつけ変化してきているとも述べています。昔と、今の子どもたちやそれを取り巻く環境の違いは何か考えてみる必要があるかもしれませんね。
さらに、匿名希望先生から、webサイトの、ある医師が書かれた文を送っていただいたので、別に掲載し紹介させていただくことにします。が、その中でこの先生がおっしゃる要点は子どもたちは親から認められることこそ最も重要なことと述べられている。
 全文は、タイトルでWEB検索できるのでご覧いただければよいと思います。
先日、東京(日学歯)に行った折、静岡県健康保健部と静岡県歯科医師会で作られた虐待防止の冊子“「子どもたちの笑顔を守ろう!」―今の静岡県の現状と私たちの出来ること―” を、竹内純子理事よりいただきました。
以前にも、静岡県歯で「No.8虐待防止の歯科マニュアル」を作られていたので、大変熱心に取り組まれていると感じます。今回はさらに注目すべきことが記載されていますので一部抜粋して紹介したいとおもいます。これも別に掲載させていただきます。
この中に、「子どもへの不適切なかかわり―マルトリートメント」PDFはこちら)という考え方が出てきます。虐待といじめは一緒に考え扱うべきだと私はずっと言い続けてきましたので、これには“腑”におちたというべきでしょうか。
 平成24年度の『児童虐待防止月間』標語は、「気づくのは あなたと地域の 心の目」
という記載もあります。
 ここでもキーワードはやはり“心”ですね。
私は虐待といじめは同じに扱うべきだといいました。
いじめの舞台は、学校である場合が多いので私たち学校歯科医としては重要と感じています。そうするうちに、大津市でのいじめによる自殺が起きたことから、クローズアップされました。

藤戸) 最近では、大阪市立の高等学校でもいじめというか、リンチというべきですね。
罰でしたが、生徒が自殺するという事件がありました。
体と心を鍛えるという意味もあったのでしょうが、高校生の心には少し耐えられない無理があったのでしょうね。精神の成熟度も考えていかなければならないと思います。
何にせよ今回の事件は、行き過ぎ感がありますね。

青木)体罰は禁止されていますからね。

村田)体育科の生徒は今後の大学などへのスポーツ推薦という絡みからも顧問には何もいえないのではないですかね。そういった話はいくらでもあって発奮させるという意味でも殴るということはあるようですが、後のフォローがうまく出来ていれば問題にも成らないケースを知っています。が今回は異常です。

青木)教える側に愛情があるかどうかですよね。

MC)「今の学校ではなくずっと以前の小学校での話で、当時私は、PTAの会長もしていましたので校長と大変仲がよくって、大変信頼していただいて何かと相談されたのを思い出します。やはり学校によく出向くことで信頼関係が築かれるという事だと実感しました。そのとき、先生から生徒への言葉でのいじめ事例に遭遇しまして、クラス全員の親を呼んで集会をするまでに発展しました。校長は事前に、私には明確にお考えを話されてたにもかかわらず、集会では突然あやふやな答弁に終始して、余計に怒りをかってしまったことを覚えています。
結末は、その子の家族は引っ越してしまい、クラスの先生は次の年度に担任をはずされました。その校長も、定年を一年残して自ら退職されてしまいました。なんとも後味はよくないですね。皆さんも、何かしら経験や、伝聞したことってあるのではないでしょうか。

青木)社団法人吹田市歯科医師会主催の出前講演やロータリークラブなど奉仕団体主催の出前授業は、地域社会に好評を博しております。
最近、その出前授業で地域の中学校に出向いた時に、校長先生から出前授業風景を撮影してもらうにはやぶさかではないが、生徒の名札や、正面からの顔を撮らないでほしいとの要請がありました。
理由は、生徒の中には、10%弱の養護施設からの生徒が含まれていて、その中にはもちろん保護者のない者が大半を占めるが、中には児童虐待とかで、親と強制的に離されて暮らしている者もいるので、この学校に通っているという情報が親元に知れると困るとのことでありました。
このような身近なところで、児童生徒の心の問題が潜んでいることを現実に知り、驚きました。

村田)児童虐待、ネグレクトの問題が近年さらに深刻化しています。
我々も歯科医師の専門分野から、その防止や早期発見の一翼を担っていると思います。
その所見として、①顔、口腔内外の外傷、不自然な歯牙破折等の直接虐待を疑うもの ②多数歯の未処置のむし歯、歯肉の腫脹、極端な歯垢の沈着、口臭等、間接的にネグレクトを疑うもの。
実際、個々の診療所にそのような対象者が受診する率は低いかと思います。
そこで我々学校歯科医が園、学校での春の定期健康診断がそれらを見極める数少ない場ではないかと考えます。
私も思い立って、実は4,5年前に一度、長年担当している中学校でこれを実施してみたのです。春の定期健康診断の当日、養護の先生の説明をして打ち合わせをしておいた後、全生徒からネグレクトを疑う生徒を5人程度ピックアップして、各チェック内容を伝え、万一の可能性と言うことで生徒の観察、対処をお願いしました。
ところが、意に反して学校側は大変困った様子で、どう対応してよいのかわからない。との返答でした。その後については、私からは聞いていません。
日々学童の健康管理に熱心な先生方でしたから、私の準備不足もあったのかもしれません。
対応の難しさも実感しました。

青木)通知することを実践されているのにトラブルが起きた例ですね。

岩本)今なら、また対応も違ったでしょうけどね。

青木)理事会では報告されたのですか?

村田)いいえ、理事会には上げていません。校長も巻き込んで話し合いをすればよかったかもしれませんね。

青木)大阪府/府歯科医師会からマニュアルも来ましたよね。

MC)マニュアルが発行されたのはずっと後になってからですね。つい最近でしょう。

岩本)私は3校担当していますが、今年、そのうちの一校の小学校養護教諭から
「気づかれた事例がありませんでしたか?」という問い合わせがありました。 これは初めてのことです。

村田)自分たちの専門性を生かして発信できることはしてあげないと万一でも千人のうちから1人、2人でも助けることができればよいと思いますね。

岩本)そうですよね。

村田)まだまだ技量不足ですが。

岩本)難しいと感じますね。持って行き方があるでしょうしね。

大宅) 少し古い本なのですが、『いじめを考える』という本を読むと、
いじめは憎むべきものではあっても人間社会の中では憎むべき一つに過ぎないと書かれています。
もっと、悪いことがあるということでしょうか。悪を社会から消すというのではなく、そういった過程の中でいじめに向かい合って克服していくべきものだということです。
ここで問題点として、報道の仕方、マスコミの姿勢に少々病的なものを感じるとも記載されています。
さらにいじめる者を、よく知る必要があるということです。これは明らかに心の病気を持っていると主張されています。虐待といじめについての本を紹介させていただきます。(“私の本棚”に掲載)
 いじめは、今たいへん多いように思われがちですが、青少年犯罪は、統計的に見ると、昭和三十年代をピークに激減といっていいほど減少してきており、現在は多くも無く、少なくも無い横ばいの状態が続いているとのことです。

村田) 統計というのは、いじめについては本当にわかるのでしょうかね。おもてに出ている分だけを数えてるわけでしょう。

MC)『極妻・・』の作者、家田荘子氏は、子どもたちはいじめられていても外には出しません。みんな隠すのです。俳優ですよ。と、ご自身の経験から講演でおっしゃっていました。他の者が、見つけ出せる確立はきわめて低いということですよね。
 いじめは学校で起きますが、虐待はかなり小さい子どもたちに多く起きているという報告で、6歳までの子どもたちが犠牲になるケースが大半だそうです。そういった意味では保育園や幼稚園の年少さんが該当することになります。こういった意味でも、今後は歯科医師として保育園歯科医らとも連携を持つことが必要ではないかと思います。

青木) 年末吹田市から送られてきた資料に、妊産婦健診の際に妊婦に指導し、手渡してほしい旨の文章と共に平成24年度妊娠・乳幼児期対象食育推進事業として「これからママになる皆さんへ」PDFはこちら)というプリントがありました。
そこには、食を中心としたこころとからだの健康づくりとして、6つ程書かれてあるのですが、そのひとつに食を通したコミュニケーションとして、家族や友人と食卓を囲み楽しく食事をすることでこころの健康を育むとありました。

村田)学校での絆を築くという意味でも、給食は大切ですね。同じ釜の飯を食う。というのがあります。

MC)私もそのことには同感です。子どもの温かい気持ちを育てることは重要なことです。たまたま今回私の考えを別に掲載させていただいていますが、自分たちで作ったものを食するとか給食を上手に利用していくことが今後の課題になるのではないかという気がしています。

藤戸)私の場合は、子どもの頃うちで家庭菜園をしていまして、さやえんどうとか同じ時期にそればかりが出てくるので嫌いになってしまいました(笑)

MC)子どもたちは、本能的に緑のものは好きではないというのがあるそうです。

村田)嗜好、考え方は成長するにしたがって変わっていくものです。

MC)さて、ここまで話を進めてきて私たちにとってどこまでかかわれるか?ということを考えてみるといかがでしょうか?

青木) 我々歯科医がその専門職を通じて社会に貢献できることについては、学校歯科医として地域の子ども達や、生徒並びに学校教職員に対し口腔歯科保健の重要性についての啓発を促すことが大切ではなかろうかと思いますね。
『学校歯科俣健の目的は、生徒、児童の年齢や口の状態に応じた適切なブラッシングの方法や器具を選択でき、自分で観察、評価できる能力を身につけると共に、歯・□の機能や重要性を知り、大切にする「心」を養うことにある』と日本歯科医師会雑誌2012年7月号「学校歯科保健の目指すところ」に記載されていました。

MC)確かに私たちの職業からできることをする。これが基本ですね。

村田)学校保健安全法に健康診断時、不自然な所見を認めた場合、ネグレクト等の関連性を考慮する必要があると明記されています。
 実際に、学校現場で虐待やネグレクトの早期発見に積極的に取り組まれている学校歯科医は多いと思います。そのような経験を持った先生を迎えて、勉強会や講演のようなものがあればぜひとも拝聴し、役立てたいと思います。

MC)長時間ありがとうございました。「いじめ」、「虐待」といったことについては私たちも自分ながらの考えを持っておかなければなりません。どこでも、すぐに意見が出せることも大事です。心にその考えと知識を持って、またアンテナを張って学校(園)歯科医の仕事に臨むことが大切で重要なことだと思います。
 まとめるとするなら、「いじめや虐待に対して何かをするというのではなく、心にとどめておいて学校(園)歯科医として子どもたちと接する」ということですね。
また、さらに学校歯科医として、学校や園の関係の先生方とコミュニケーションが大切であるということがわかりました。