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特集コーナー

府学歯報テーブルトーキング「食」

他県歯学校歯科担当実務者との交流座談会

おいしく食べることへのこだわり、それには五感が大切!―学校歯科医が子どもたちに伝えること―

日時平成24年7月29日(日) 午後12時10分~午後2時10分
場所新大阪江坂「東急イン」(大阪府吹田市)
3Fメイプルルーム

出席者
静岡県歯科医師会理事/日本学校歯科医会理事竹内純子 先生
石川県歯科医師会理事(学校歯科)長 哲也 先生
兵庫県歯科医師会(学校歯科保健委員会副委員長)
/ 神戸市歯科医師会(学校歯科医保健委員会委員)
藤本直樹 先生
大阪府学校歯科医会 副会長田幡 純 (テーブルリーダー)
同(広報担当)常務理事寺下邦彦 (MC)
同(学術担当)常務理事松本 仁 (録音Ⅰ)
準備・協力スタッフ(大阪府学校歯科医会)
(広報担当)理事岩本圭司 (録音Ⅱ)
(広報部会第1副部長)村田 肇 (Photo)
(広報部会第1部長)青木建雄 (会場設定)

挨拶:大阪府学校歯科医会 専務理事 髙橋達行
本日、お暑い中、大阪吹田市迄お越しいただきありがとうございます。
食育基本法が平成17年に制定され7年がたちましたが。私としてもどのように全会員に浸透させればよいのか、思案中でございます。
この度のテーブルトーキングを有意義なものとしていただいて、私たちに方針を示していただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

MC) お忙しい中、また遠方から府学歯の呼びかけに応じてご出席いただきありがとうございます。府学歯報も「井の中の蛙」であってはならないと強く思うようになり、広域の学校歯科医の先生方にお集まりいただき座談会を企画しました。 幅広く、気軽に話しあっていただこうということから、造語ではありますがテーブルトーキングと名付させていただきました。
では、本日ご出席の先生方のご紹介から始めようと思います。
(冒頭のお名前掲載のみとさせていただきます)

MC)さて、この度のテーマは『食』です。
食と一言で言いましても範囲はあまりにも広く、文化、伝統、食材、健康等、色々考えられます。
今では、「食」は学校歯科医にとっても重要なテーマとなりました。
食を取り巻く環境の大きな変化もあり、さらに体の健康という側面から子どもたちと向き合うようになりました。しかし、いまだに行政の学校歯科医、学校歯科保健に対する姿勢が変わっていない地域が多く見られる気がします。無論われわれ自身が変わって行かねばならないわけで、単純に映す鏡かもしれません。
私たち自身が、積極的に学校へ出向き発言力を高めていきたいと思います。
学校歯科医の一番の目的は「子どもたちのために何が出来るのか」ということだと思っています。先日の日学歯総会や近北学校歯科医会連絡協議会での質問で、「最近の酸蝕歯予防のため、30分置いて磨こうという理論がある中で、学校では給食の後等“食べたら歯をみがこう!”というのはどうなのか?」と言うことについて。私の考えでは、学校歯科医としては「子ども達のためになるかどうか」に照らして考えるべきであると思っています。
最新理論がどうであろうと、子どもたちにとって習慣を身につけることが大切です。
さて、「食」を語る前に。その取り巻く法律や考え方についておさらいしてみましょう。
学校歯科医が食に取組必要が出てきたわけが見えてくると思います。
学校給食法についての解説を、兵庫県歯科医師会の藤本直樹先生よりお願いします。

藤本) 学校給食法は平成21年に大幅に改正されました。その内容を少しお話しします。
第1条に、「学校における食育の推進」を新たに規定し、学校給食を、「生きた教材」として学校において食育を推進して行く上で重要なものとして位置付けています。
また第2条では、食育の観点を踏まえ、新たな目標も加え、以下の7項目に整理、充実させています。
すなわち、

(1)適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること
(2)日常における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、および望ましい食習慣を養うこと
(3)学校生活を豊かにし、明るい社交性および協同の精神を養うこと
(4)食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命および自然を尊重する精神ならびに環境の保全に寄与する態度を養うこと
(5)食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについでの理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと
(6)我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること
(7)食料の生産、流通および消費について、正しい理解に導くこと
この目標の整理、充実により、学校給食が単なる栄養補給のための食事にとどまらず、学校教育の一環であるという趣旨がより明確となりました。
さらに栄養教諭の仕事が明確になったといえます。
文科省の統計によると、平成17年に全国で34人しかいなかった栄養教諭が、平成24年度4262名と一気に増えています。その配置状況は、兵庫県は331名と北海道、大阪府について3位となっております。(多いからどうというわけではないと思いますが)
神戸市では平成22年、23年度「栄養教諭を中核とした食育推進事業」を実施しました。
そのテーマは「教科における食に関する指導の充実(地域・家庭と連携した取組)」「食事のマナーや食物の大切さの指導を充実させるための方策」「食体験や教科学習と連携させた望ましい食習慣を形成するための方策」「地元の食材を通した文化の継承のための方策」などです。
このような取組は、近年全国各地で行われているようで、平成22年度の給食での特産品使用率は全国で25%になっています。
しかし一方で、これは最近本屋で偶然手に取った2冊で、衝撃の写真を目の当たりにしました。
岩村 暢子著『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』、
幕内 秀夫 著『もっと変な給食』と言う書籍です。
このあたり、理念、理想と現実のギャップがまだまだ大きいということなのでしょうか?

MC) 学校給食を「生きた教材」としつつ、学校において食育を推進していく上で重要なものととらえているということですね。
「食は教育だ」と言うことですが、高野山のお坊さんも言ってましたね『食は修行だ』と。
まさしく、これですね。・・・違うか。
栄養教諭の配置は地域によってずいぶん差があるようです。ちなみに、私の市域では中学校に一人、小学校に二人配置されていると聞きました。府教委からの配置によるものだとのことです。

松本)栄養教諭の配置状況はどうなっているのでしょう?

竹内)「平成24年版食育白書」からスライド資料を作ったものをお持ちしましたのでご覧ください。
大阪府に於いても年々増えているのがわかります。

松本)私の所属する大阪の箕面市では各学校に栄養教諭が配置されているそうです。

竹内)素晴らしい

MC)「食育」に対しての考え方に地域によって温度差があるようですね。
さて、「食育」と一言で言っても、大変広い範囲を指しているので正直なところ、学校歯科医として戸惑うというのが正直なところです。「食育」の背景を踏まえて私たち学校歯科医は、どのようにアプローチして行けばよいのか。「食育」のとらえ方について、静岡県歯科医師会の竹内純子先生に解説をお願いします。

竹内)「食育」を歯科医が考えるとき「私たちの体は口から食べたもので出来ている」、「食」は命のもと、元気や健康のもとです。賢く「食」を選び「食べ方」を学び自分の健康を自分で守る。それが「食育」の基本であり、その「歯」「口」の健康を守ることに携わっている私たち歯科医師、学校歯科医はその責任を感じるとともに、その誇りと喜びを感じます。
平成17年に食育基本法は施行されますが、その背景には、以下の7つの問題点がありました。たとえば、<1>「食」を大切にする心の欠如 <2>栄養バランスの偏った食事や不規則な食事の増加 <3>肥満や生活習慣病(がん、糖尿病など)の増加 <4>過度の痩身志向 <5>「食」の安全上の問題の発生 <6>「食」の海外への依存 <7>伝統ある食文化の喪失と言ったことが根底にあり、その後5年経ち問題が依然解決されない現状、特に子ども達を取り巻く食の環境はいまに大きく乱れていることを鑑み、第2次基本計画では食育推進の目標に関する事項に4つの新規事項を追加されました。その中に歯科が関わる事項が追加されたことは、私たちにとって、大変重要なことです。
この中で、学校歯科医がすべきことについて考えていきましょう。現代の食生活の悪化の原因を考えた時“6つの「こ」食化”が考えられます。
1、個食(個々食);家族がそれぞれ好きなものを食べる
2、固食(固定食);いつも決まったものしか食べない
3、子食;子供たちだけで食べること
4、孤食;ひとりっきりで食事をすると早食いになりやすい
5、小食;食が細く食べる量が少ない
6、粉食;大阪は粉もん文化と聞きますが・・粉を使った主食
子どもの頃に身についた食習慣は、その人の一生の食習慣を左右する大きな意味を持ち、子どもたちが豊かな人間性を育みます。生きる力を身につけていくために、「食」に関する知識や、「食」を選択する力を身に付かせ、「食べ方」の持つ意味を教えていくこと。そのことこそが、私たち学校歯科医の使命です。
学校歯科医は保健教育として、ヘルスプロモーションの理念のもと、「自らが自分の健康を勝ち取る」ということ。すなわち、「食べるものを選ぶ」ということだけでなく、「食べ方を学ぶ」ことで、自らわかる!、自らできる!、豊かな生涯のため「生きる力」を育むことができるよう子どもたちに「歯科からの食育」の情報発信をし
続けていくということが大切だと思います。
具体的には、1)学校保健会・学校保健委員会・学校給食会などへの情報提供 2)学校における食育の授業にゲストティーチャーとして関わること 3)養護教諭や栄養教諭との連携 4)家庭・保護者との連携とあらゆる場面において情報発信し「周知」し「実践」することが課題となると思います。
このことは日学歯発行の「学校給食の舞台に踏み出す新しい一歩」に詳しく書かれていますのでご覧ください。
特に良く噛んで味わうことで、「五感」(視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚)を豊かにはぐくむことにより、心と体の健康に及ぼす拡がりは多面的であることを伝えていきます。
五感を育むことは、子供たちの心の育成に繋がります。
又食べ方の及ぼす影響について、(噛むことの効用について)「ひみこのはがいーぜ」というキャッチフレーズがあります。
ひ―肥満の予防、 み―味覚の発達、 こ―言葉発音がはっきり の―脳の発達
は―歯の病気の予防、 が―がんの予防、 い―胃腸の働きを促進 ぜ―全力投球
それぞれの頭文字をとったものです。
口腔機能への拡がりだけでなく、精神機能への拡がり、心のくつろぎ、味覚等にも影響し、生理機能への拡がりとして唾液が出ることにより免疫力が強くなり、むし歯や歯周病の予防にもつながる、又よく噛むことで平衡感覚もよくなり運動機能への拡がり、又異物・危険を認識できる安全性への拡がりといったようなことを子どもたちにしっかり伝えていきます。それがひいては、8020に繋がり、生涯健康で、元気で笑顔の人生を送れるということになっていくと思います。

MC)おいしく食べるためには、「五感」が大切で、「よく噛んで食べる」ことだ。とお話がありました。この辺りが、学校歯科医が活躍するところですね。
「食育」では、キーワードとなる言葉が出てきます。その用語について府学歯学術部会の松本 仁よりお話してもらいます。

松本)府学歯では、3月に「学校歯科医のための食育マニュアル」を発行しました。奥羽大学の瀬川洋先生に「五感」の言葉を入れるようにアドバイスを頂き最初のページに掲載しました。
詳しくは、すべて竹内先生がお話しされましたので。(笑)

MC)“噛ミング30(カミングサンマル)”というなじみのない言葉がありますが、説明していただけますか?

松本)「学校歯科医のための食育マニュアル」P.5を参照ください。(笑)

竹内)“噛ミング30(カミングサンマル)とは平成21年に向井美恵先生が座長を務められた“歯科保健と食育のあり方に関する検討会”で、発信されたキャッチコピーです。これが発展のための旗印です。

松本)食を通して健康寿命を延すためには、その基盤となる小児期から高齢期に至るまで「口の健康」と関連させて健康づくりの視点から「食育」を推進していくことが重要だとの「歯科保健分野」からのアプローチの指針が示されました。わかりやすく言うと、8020を達成する一つの目標として、歯を残して、よく噛んで、一口30回は噛むようにして食べようというのが「噛ミング30」の内容で、それを大きくした「食べ方」を通して食育を推進していこうというのが「食育推進宣言」です。
こうしたつながりの中で、「食育推進宣言」をサポートする一つのツールが「噛ミング30」と言うことです。

MC)30回噛むことに意味があるということですね。
「よく噛んでおいしく食べること」は、第2次食育推進基本計画の柱だと思うのです。
第2次食育推進基本計画の目標に沿って、内閣府では『食育ガイド』(「食べること」は「生きること」)を発表しています。
第2次食育推進基本計画の目標について、石川県歯科医師会の長 哲也先生に御解説をお願いします。

長 )(基本計画について先の基本計画と比較して解説がある。)
―第2次食育推進基本計画について、(目標値:平成27年度までの達成を目指すもの)
(1)食育に関心を持っている国民の割合の増加 《現状値》70.5%⇒《目標値》90%以上
(2)朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数の増加《現状値》朝食+夕食=週平均9回⇒10回以上
(3)朝食を欠食する国民の割合の減少 《現状値》子ども1.6%、20歳代~30歳代男性28.7%⇒《目標値》子ども0%、20歳代~30歳代男性15%以下
(4)学校給食における地場産物を使用する割合の増加 《現状値》26.1%⇒《目標値》30%以上
(5)栄養バランス等に配慮した食生活を送っている国民の割合の増加 《現状値》50.2%⇒60%以上
(6)内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の予防や改善のための適切な食事、運動等を継続的に実践している国民の割合の増加 《現状値》41.5%⇒《目標値》50%以上
(7)よく噛んで味わって食べるなどの食べ方に関心のある国民の割合の増加 《現状値》70.2%⇒80%以上
(8)食育の推進に関わるボランティアの数の増加 《現状値》34.5万人⇒《目標値》37万人以上
(9)農林漁業体験を経験した国民の割合の増加 《現状値》27%⇒《目標値》30%以上
(10)食品の安全性に関する基礎的な知識を持っている国民の割合の増加 《現状値》37.4%⇒90%以上
(11)推進計画を作成・実施している市町村の割合の増加 《現状値》40%⇒100%
この中の(2)、(6)、(7)、と(9)が新規追加された項目です。
「(7)よく噛んで、味わって!」の、項目が新たに加わったことが、私たちの専門とするところであり、力を発揮するところであるということですね。

MC) 内閣府発行の『食育ガイド』の巻頭言に、「現在をいきいきと生き、生涯にわたって心もからだも健康で、質の高い生活を送るために、「食べること」を少し考えてみませんか?」とあります。最前線におられる先生方と「食」について語り合う中から、ヒントが生まれればうれしいことです。
(「内閣府の食育ガイド」の詳細はホームページで検索していただきご覧いただきたいと思います。)
さて、第2次食育推進基本計画に戻りますが、「朝食を食べない子どもの数を減らす」ことも目標となっていますね。学校現場でいつも問題に出るのですが、大阪府でも、「野菜パクパク、朝食モリモリ」を合言葉にしています。私に言わせれば、今頃、何を言ってるネン。という感想です。
10年以上前、私の担当した小学校でも、「朝ごはんを食べよう」を合言葉にすることを提言したのですが、食育という後押しがなく、トーンが下がってしまった経緯があります。
しかし、データでは「食べてる」と答えた子どもの数が大変多いと感じたのですが。

竹内)子どもたちの朝食欠食率については、白書データをご覧ください。

MC)このデータでは「何を食べたか?」と、聞いていませんよね。
「朝ごはんを食べた?」と聞いただけでは、 朝ごはんにチューインガムを食べても朝食と思っている子どもがいることも事実です。
私は、最近中学校の学校歯科医に移ったのですが、そこの養護教諭が中学生なら自分で作って食べれる。と、自分で作れる朝食の大きな写真付きのレシピを玄関正面に貼っていました。感心して、褒めましたね。

田幡)それはいいですね!「その先生は正しい」と思いますよ

竹内)確かにすばらしい

田幡)中学校でも給食が始まっているのですよね?

MC) 私の市では、この4月から始まっていますね。ただ、給食時間が短く、量が少ないとぼやく生徒が多いと校長から聞きました。

田幡)“噛ミング30”なんて話は通用しませんね。それだけ噛んでたら、給食時間は終わってしまう。(笑)

竹内)大変短いと思いますよ。歯の生えかわりの時期によっても給食をしっかり食べる時間は今の状態では短すぎると思います。

MC) 昔、私も小学校では給食を早く食べるのがよいと思っていた時期があります。今も変わらないのかな。
このことが、食への興味をなくす原因になっていないだろうか?と心配します。

田幡)われわれが強く言ったから、直るようなものではないですよ。

長 )給食は安価な食事代で作るのですから大変でしょう。給食の試食日と言うのがあって我々もお金を払って、いくのです。おいしいですけどね。量は少ない。

MC) 懐かしいですね、体験したい。さて、基本計画に「共食」と言う言葉が出てきます、「一家団欒だんらん」と言う四文字熟語ではなく「共食」と言ってますが、私は好きな言葉ではありません。(共食いともぐいを連想するからです)
ある学校の先生にお聞きしましたら、内閣府の「共生社会」から来てるのではないですか?とのことでした。
塾帰りに、コンビニの前で友人同士が買い食いをしているのは「共食」とは言えないですね。友達同士は“ゆうしょく”(友食)ですか?
ここでは一家団らんの食事を言ってるようです。学校給食も含んでのことですね、そのため「共食」と言ったのでしょう。

田幡)一家団らんと言うのは、はたして古来からあったのか、と言うと実はないと思うのですよね。
一部の時代にあったと思うのですが、もっと以前は御父さんが一家の中心であってそういった時代は大変長いと思っています。サザエさんの磯野家の食事なんかが一家団らんと言うのでしょう。でもこれは歴史の中の一時代に過ぎないと思うのです。
たとえば、サウンドオブミュージックの映画の中で、大佐の家で子どもたちが全員テーブルにズラーッと並んで食事をするシーンがあるのですが、私語は厳禁でした。
団らんということは海外でさえないのではないかと思うのです。

MC) サザエさんの時代は戦中、戦後でしょう、お父さん中心ですね。
ちび丸子ちゃんは、昭和40年代くらいでしょうか?お母さんが強くなってきています。
実は、私も同じことを思っていました。
昔は子どものための食事と言う考えはなく、お父さんが中心だった。子どものための日が別に作られているわけです。サザエさんのうちでも、お父さんはお酒を飲んでいます。
古来から、お酒が食事の中心にあったと考えられないでしょうか?日本の古式豊かな祭事でもお酒はなくてはならないものです。お酒が食の歴史をつくてきた。
田幡先生と東京から帰る新幹線で持論を展開したら同じ発想だったのを覚えています。
最近の母親は、節約をするという場合には食費で削ってくるといわれています。
確かに、ダイエットといわれる名前で、食が細くなっていることがあると思うのですが?
近年テーマパークに遊びに行くケースが多くなっています。すると、園内での食事が決められてしまうのです
ね。遊ぶほうが楽しいですしね。昔は家族で、遊園地にお弁当を持っていったものです。団らんで食べましたね。
さて、ここでお聞きしたいのは。それぞれの地域で食育に関したイベントや指導、講演、冊子の発行等ありましたか。

長 )本年11 月開催の講演会のイベントチラシを持参しました。石川県の2 箇所で、先ほど話に出た食育の向井美恵先生の講演会を開催します。

MC)竹内先生の静岡では昨年「ふじのくに食育フェアー」が開催されました。白書にも掲載されていますね。

竹内)全国大会ですね。今年は横浜です。

MC)竹内先生は、昨年静岡で行われた全国学校歯科医連絡協議会で“食教育に関する”シンポジウムがあり、シンポジストを務められました。また、8 月9 日には滋賀県大津市で“食育”の講演をされます。

藤本)昨年度で解散しましたが、神戸市学校歯科医会では、平成19 年から21 年の3 年間、学校歯科保健研修会において、食育をテーマに講演会を開催しました。はじめは辻調理師学校から、次の年には料理教室の先生を、3 年目には栄養教諭に講演をお願いしました。ただ、どれも学校歯科医にとっては、歯科保健と関連づけるのが難しい内容だったかもしれません。
私自身は、肢体不自由児を対象とした特別支援学校の学校歯科医を平成6年より務めております。
本日のテーマからは一番遠いところに位置する学校かもしれません。
ただ、私自身が歯科医師として「食」を考える原点となったのが、まさにこの学校です。
と申しますのは、この学校での歯科保健活動を模索していく中で、当事の養護教諭から「摂食・嚥下」について、保護者、先生といっしょにもっと勉強しないと、という話を聞きました。摂食嚥下障害のある子どもたちにとって、限られた給食時間内に知識、経験の少ない先生に食べさせられることほど苦痛で危険なことはなく、この子達が今後学校、家庭で食べることを楽しむことが出来るようにしなければということです。
このことと、阪神淡路大震災における歯科と食の関わりについて、先輩の先生方がまとめていただいた冊子で知った災害時の食事情、現在訪問診療をしている施設、在宅での高齢者の食の様々な問題、この3つが、私にとって「普通に食べることができること」の幸せ、意味を考える材料となっているような気がします。

MC) 高齢者の食にも取り組まれているようですが、食育は園児から高齢者までの間断のない推進を謳っていますので食育にかなっていると思いますね。藤本先生が、阪神淡路大震災について触れられているところがあります。
実は、私がこの座談会を、広域で集まっていただく発想になった根底が、一生の間に2 回も経験した大震災にあります。
これからは、広域でのつながり、助け合いが重要になるのではと思います。
「食」からは少々外れるとしても、是非ともこのあたりも触れていただくほうがよいと思います。
たまたま、竹内先生は最近、岩手県に視察で行かれたそうですね。

竹内)(岩手県大槌町の被災地を視察された状況や、そこの仮設歯科診療所や保育園を訪ねられた時の状況をお話しされ、小学生の作文を披露された。)“白書より抜粋”

三日目、凍りつきそうになる両足をカタカタ震わせながら考えた。
(そうだ、あの日も、私はごはんを残していたんだ。しかも、私達の学年の残飯量は、毎日、目立っていた。)
あちらこちらから、せきをする音が聞こえ、避難所として用意された教室に響いた。そして、小さい子が泣き出す。「おなかへったよお。」その子達のお母さんが、二人をだっこして、教室の外へ出ていく。「すみません。」
小さな声だった。私は心の中で返事をする。(誰も迷惑なんて思っていませんよ。)
丸二日、食べ物を口にしていない。突然、恥ずかしいという思いが押し寄せてきた。自分の意志で、食べ物をそまつにしてきたことに対する恥ずかしさ。「え、本当に。やったあ、やったあ。」「もらえるんだって、おにぎり。」
(うわあ、三日ぶりのごはんだ。)配給されたおにぎりを両手を器にして、半分腰を曲げて受け取った。いや、頂いた。でも、あれほど待ちのぞんだおにぎりなのに、食べるのがもったいないように感じられた。友達と、こんな会話をしながら、寒さや恐怖とたたかっていたのだ。 「食べ物が食べられるようになったら、最初に何食べたい。」 私達の答えは、三人とも、おにぎりだった。 この時、私の耳に入ってきた言葉、 「ありがたいねえ。」 近くで窓の外をじいっと見つめながらおにぎりを食べていたおばあさんの言葉だった。この言葉によって、手の中のおにぎりが、よりいっそう輝いて見えた。感謝の心が、つやつやと光っている。
友達と顔を見合わせ、どちらからともなく、口にした言葉。 「食べるよ、食べるよ、せえのっ。」 口にしたおにぎりの味は、たぶん、一生忘れないと思う。 「一つ夢、かなったっちゃあ、私達。」 お米の味をかみしめながら、自衛隊の人に手を合わせ、何度も何度も(ありがとう。)を繰り返した。
今、思う。あの日のおにぎり、あれは希望だった。あのおにぎりがあって、私がいる。おなかがへった、と泣いていた二人の命がある。寒さとたたかっていたお年寄りの方々の命がある。あれは、千二百の尊い命を救った、まさに命のおにぎりだったと思う。多くの手と、その思いが実らせるお米だからこそ、私達に希望を与えてくれ、明日を感じさせてくれたのだと思う。支え、支えられるための力を生み出してくれたお米に感謝したい。
(ありがたいねえ。)

竹内)津波ですべてが流され、食べたいものが食べられない、炊き立てのおにぎりが食べられない。
そういう話を被災地でお聞きし、この作文がすべてを物語っていると感じました。日々当たり前に口にする食べ物に対する感謝の気持ちが大切であると改めて考えされられました。

MC)震災にさらに、原子力発電所の事故が加わったのですが、現地の漁業は壊滅的でいまだに36種類もの魚介類の漁が禁じられているそうです。

田幡)藤本先生は阪神大震災の時はどこで被災されたのですか?

藤本)自宅と診療所のある神戸市東灘区です。水道やガスがなかなか来ないので、まともに診療できませんでした。
担当校は激震地にある養護学校でしたので、長期間避難所となっていました。在校生について、とても一学校歯科医が何かできるような状況でなかったように記憶しています。それでも何かしたくて、避難所になっていた近所の小学校に診療所にあった歯ブラシを届けましたが、今考えるとかえって迷惑だったのかもしれません。

高橋)そういう時、被災していない他地域の学校歯科医は何をすべきなのでしょう?

竹内)視察に行った保育園は1つだけでしたが、そこの園長は「何よりもお金がありがたい」と言っておられましたね。

MC)さて、この話題は別の機会にお願いするとして、歯科医が一番苦手とするのはやはり栄養と言う点ではないでしょうか。「カロリー」については、一番歯科医にとって、弱い点かもしれないと感じていますが。専門的には習っていませんしね。最近の大学では栄養学が授業に入ったとも聞きます。
まず皆さんに、クイズを出させていただきます。
正解が多かった先生に、府学歯報で紹介した本を差し上げます。
(問題のみ掲載し、その模様は省略させていただきます。ちなみに、書籍獲得者は村田先生でした。)
カロリーが低いのはどちらでしょう?」という問題です。

竹内)歯科から「食育」を語る時、カロリーより咀嚼回数の多さにテーマにもって行かないと、栄養士さんからの提言になってしまいます。

MC)まさしくその通りですね。岡山大学の小児歯科講座の岡崎好秀先生は、講演で「食育」には視点が2つあると申しました。
簡単に申しますと、何を食べるか、例えば「和食」か「ハンバーガーセット」と言った風な見方。
もう一つは、どのように食べるか。よく噛んで食べることによってからだが健康を保つという見方。
今、竹内先生が言われたことから、言いかえれば、栄養士からの栄養学的な見方と、学校歯科医からみる歯科医学的な見方が出来るということですよね。
学校歯科医として、「食育」にどのようにアプローチするかについて、大きなヒントになりました。
ここで、竹内先生にまとめていただいてよろしいでしょうか。

竹内)“府学歯報第49号”で紹介させていただいた『食卓の向こう側〈第13部〉命の入り口 心の出口』(西日本新聞ブックレット)という本にあるように、私たち口の健康が全身の健康につながっている、ということが徐々にわかってきています。口を命の入り口にするか、病の入り口にするかというのが、私たちの意識のいかんにかかっているということを伝えていくのが一番大切なところかな、と思います。
先ほど話にもありましたが、「何を食べる」のではなく「どのように食べるか」ということ。そこには「噛む」ということが大切であり「生きる力」であるのだということを子供たちにしっかり伝えたい。よく噛んで、ポリポリ、パクパク、カリカリ・・・幸せのにおい、香り、音、思い出・・・・・。
見て、聞いて、嗅いで、味わって、触ってというように「五感」を使って食べることで、生きる力をはぐくむことができる。それには「歯・口が大切である」という気持ちを育てていく。このことが学校歯科医の役割ではないかなと思います。
「噛ミング30(カミングサンマル)」というキャッチフレーズがまだ浸透していないのが実状ですけれども、
地域や家庭を巻き込んで子ども達の健康を支える一つの指針として提唱され、もっと広く浸透していくこと。そして、これが子どもたちの心と体の健康を支える他職種との連携の旗印となることが望ましいと心から願っています。

MC)今のお話を、『共通認識』として簡単なフレーズでまとめると、
★子ども達に、「よく噛んで、五感を使っておいしく食べよう」を伝えること。さらに家族を含めて、「どのように食べるのかが大切」である。
と、言うことでよいですね。
では、この言葉を持って、座談会に参加していただいた先生方の『共通認識』として宣言させていただきます。
さらに、共同キャッチフレーズは
★「おいしく食べることへのこだわり、それには五感が大切!」
このタイトルに決めさせていただきます。これも、竹内先生より頂いた言葉です。
この食育座談会での『共通認識』と『共同キャッチフレーズ』を、行く先々で宣伝していただければ幸いです。
また、私たち自身が日本の食文化や歴史について知ることが、そもそも食育に合致するのではないかでしょうか、そう言ったことにも興味と知識を持って、楽しく子どもたちと接することが大切ではないか。と感じました。
さて、終わりにあたって、テーブルリーダーの府学歯副会長 田幡 純より閉めの挨拶をお願いしたいと思います。

田幡)長い時間にわたりまして色々なご意見をいただき有意義で、また周到な資料を作っていただき、寺下先生をはじめ先生方には本当にありがとうございました。共通の認識を深めることができまして、これから学校歯科医としての方向性が広げていけるのかと思います。本日はありがとうございました。