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特集コーナー

子どもたちをタバコの害から守るために

井上裕子(池田市・普及指導部会)

 日本学校歯科医会から、防煙教育用冊子が届いた。単に喫煙が歯周病、口腔癌の原因となるというだけでなく、お口の健康から全身の健康へという観点から、子どもたちをタバコの害から守るために、学校歯科医が防煙教育に積極的にかかわっていくことが望まれる。
 子どもたちにタバコの話しをする前に、まず、「タバコを吸う人は悪くない。タバコとタバコを許している社会が悪い」ということを伝えておきたい。喫煙する親や先生方を非難するような意識を生まないよう、むしろ、その人たちの温かい禁煙サポーターになれるような配慮が重要である。
子どもたちへの防煙教育では、主に以下の5つのことを伝えたい。

1:タバコには毒が入っている。

図1を示して、毒であることを理解しやすい殺虫剤や殺鼠剤、排気ガスなどと同じ成分が入っていることを、具体的にしっかり伝えることにより、抑止力は高まると考える。


図1:タバコの成分:子どもにもわかりやすい成分を示すことにより抑止力が高まる
喫煙と健康問題に関する検討会編. たばこ煙の成分: 新版喫煙と健康. 37, 2002.
厚生労働省:健康ネット http://www.health-net.or.jp/tobacco/21c_tobacco/1st/23.html

2:タバコにはやめられない薬が入っている。

アメリカのICD10(疾病・傷害および死因分類提要/米国厚生省大臣官房統計情報部)では、喫煙は麻薬などと同じ分類に入る薬物依存性疾患であると定義されている。ニコチンの薬理作用により、吸い始めるとやめるのが非常に難しいため、親や先生も、わかっていてもやめられないことを伝えたい。吸い始めないことが重要であることをしっかり伝えたい。小学校高学年以上には、神経細胞伝達とニコチンの関係をわかりやすく教えると、より理解が深まる(図2)。


図2:タバコがどうしてやめられないのか、そのメカニズムを理論的に説明することで、
子どもたちは、より理解を深め納得できるようになる。(ファイザー社パンフレットより引用)

3:主流煙よりも副流煙の方が危険である。

図3を示して、喫煙する人の近くにいることの危険性を教えたい。親には、少なくとも子どもの前では喫煙しないよう、伝えていきたい。

タバコ煙は副流煙の方が有害


図3:タバコ煙は副流煙の方が有害であることを伝えたい

1) 厚生労働省. 健康ネット http://www.health-net.or.jp/tobacco/risk/rs120000.html
2) 厚生労働省.たばこ煙の成分分析について. http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/seibun.html 
3) 厚生省編. 喫煙の生理・薬理:喫煙と健康. 48, 1992.

4:タバコ産業は、子どもたちを狙っている。

大人たちの禁煙が進んでいる中、タバコ産業は新たな消費者を開拓するために、未成年者をターゲットにしていることを伝えたい(図4)。そして、他の先進国に比べ、日本政府は対応が遅れていることを教え、自分の健康は自分で守らなければいけないという意識を持たせたい。

  図4:訴訟や内部告発によって公にされたタバコ産業の内部文書から、ASH(Action on Smoking and Health)が証言を拾い出した本。子どもたちには、自分たちがタバコ産業のターゲットであることを理解させることが重要である

5:タバコを簡単にやめるための薬がある。

喫煙は病気であるため、薬の助けを借りると簡単に禁煙治療できることを伝え、子どもには、親の年齢であれば保険で治療が受けられることを伝えるメッセンジャーになってもらいたい。 以上のことを伝えるための防煙教育は、子どもが反抗期に突入する前の小学校で、わかりやすく、温かい雰囲気の中で、実施されることが重要だと考えている。う蝕や歯周病と同様に、喫煙も予防が一番である。子どもたちがタバコの害から自分を守ることができるように、さらには、周りの大人の健康を守れるように育むことは、私たち学校歯科医の使命のひとつであると考える。

※  井上 裕子先生プロフィール
(Inoue Yasuko)大阪大学歯学博士、日本矯正歯科学会認定医、指導医、専門医、大阪府池田市にてイノウエ矯正歯科開業
主な著書「どうしてむしばになるの? (げんきがいちばん) 」岩崎書店、「子どもの不正咬合」クインテッセンス出版